シムズ理論

「消費税の増税を延期せよ」という。その目的は「インフレを起こして政府債務を踏み倒す」
これはざっくり言えば、物価目標を達成するには金融政策では限界があるとして、財政支出を拡大し、増税は先送りして、国民に「政府は債務を返済できない」と不安がらせ、返済しきれない分を物価上昇で穴埋めする、という考え方です。つまり、政府の無責任によって国の信用を低下させ、通貨価値を下落させることで物価を押し上げようというものです。
シムズ教授の理論は、「物価水準の財政理論(Fiscal Theory of Price Level=FTPL)」と呼ばれ、デフレやインフレは金融政策だけでなく、財政政策が決めるという主張だとされる。財政支出拡大→個人や企業が将来の財政悪化を予測→貨幣価値が下落→インフレ――という経路で物価上昇につながる流れだ。

財政支出の拡大というと、ケインズ政策と同じではないかと誤解されがちだが、理屈は異なる。ケインズは、不況の時に減税・歳出拡大、好況の時に増税・歳出カットすると考えるが、FTPLは、国の借金の返済原資が足りない場合、増税ではなく、インフレで借金を「返す」という考えだ。例えば借金の半額しか返済原資がなければ、100%のインフレで原資の額面を2倍にすれば返せるという理屈だ。ポイントは、政府が、「増税ではなく、インフレで(借金を)帳消しにすると宣言すること」